「税理士さんの作った決算報告書をコピーして出せばいいだろう」そう考える方が多いですが、実はそこに大きな落とし穴があります。
税務申告用の決算書を「そのまま」提出することはできません。
建設業許可の事業年度終了届には、建設業法で定められた専用のルール(翻訳作業)が必要だからです。この翻訳作業の実務上の重要ポイントをまとめました。
税理士の決算書をそのまま出すのがNGな3つの理由
税務署に提出する決算書は「税金を正しく計算すること」が目的ですが、建設業許可で提出する書類は「建設業者としての経営状態を正しく開示すること」が目的です。この目的の違いが、以下の3つの差を生みます。
1. 勘定科目の名称が建設業専用に変わる
建設業法では、貸借対照表(B/S)の科目名が厳格に指定されています 。税理士作成の書類にある一般的な名称を、以下のように翻訳して記載しなければなりません。
- 売掛金 → 完成工事未収入金
- 棚卸資産(仕掛品) → 未成工事支出金
- 買掛金 → 工事未払金
- 前受金 → 未成工事受入金
上記のように工事に係る内容について、勘定科目を読み替えて報告しなければなりません。
2. 原価報告書の4分類という壁
損益計算書(P/L)において、税務用では「売上原価」として一括りにされている数字も、建設業様式では「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つに細かく分解し直す必要があります 。
- 材料費 : 工事に直接使用する資材費
- 労務費 : 自社で直接雇用している作業員の賃金および法定福利費
- 外注費 : 協力会社や一人親方など、請負契約に基づく支払額
- 経 費 : 工事に直接関連するその他の費用(保険料、燃料費、現場消耗品等)
税理士作成書類では、外注費と労務費が混ざっていたり、材料費が別の場所に含まれていたりするため、これらを再度集計し直す作業が発生します 。
3. 工事経歴書との整合性チェック
これが最も重要なポイントです。事業年度終了届には、1年間の主な工事をリストアップした工事経歴書を添付します 。
- 完成工事高(売上高)
- 工事経歴書の合計金額
この2つの数字が一致しているか、あるいは合理的な理由(未成工事の扱いなど)があるかをチェックされます。税理士の決算書をただ写すだけでは、現場の実態を反映した工事経歴書との整合性が取れず、虚偽報告を疑われる恐れがあります。
まとめ:決算書はあくまでも材料であり、完成品そのものではない
税理士さんが作成した決算書は、事業年度終了届を作るための「正しい材料」です。しかし、それを建設業法のルールに従って翻訳(組み替え)しない限り、正式な届出書類にはなりません。
これらの科目の分類が適正か、注記表に必要な事項が漏れていないかまで細かく見られることがあります。

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